「君は、右という言葉を説明できるか」
見終わってからしばらくの期間、普段の生活で用例採集しようとしたもんね
辞書作るわけじゃないのに
※↓ネタバレあり 注意!

舟を編む あらすじ(短め)
物語の舞台は、出版社の一角にある辞書編集部
営業部から異動してきた馬締光也(まじめ君、まじめちゃん)
人付き合いが苦手、暗い、不器用、話下手、鈍感、風変わり…な彼が十数年かけて新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を作っていく話
それっぽく言うと、辞書を通して「言葉」と「人」をつなぐ物語 多分
時代設定
冒頭 1995年 という文字からスタート
ここから十数年かけて辞書を作る話なわけですが、この頃の日本は
バブル崩壊後の不況(1995〜2000年頃)
バブル経済(80年代後半)の崩壊後で、景気が長く低迷していた時期
企業が倒産したり、就職が難しくなったりして「就職氷河期」と呼ばれた
一方で、インターネットが一般に広まり始めたのもこの頃
ITとケータイ文化の時代(2000〜2005年頃)
パソコンが一般家庭に普及。メールやホームページが身近に
携帯電話が急速に広まり、「iモード」(NTTドコモのインターネット機能)が登場
若者文化ではプリクラ、ギャル文化、渋谷系ファッションなどが流行
景気はまだ回復しきらず、非正規雇用が増えて「格差社会」という言葉が出てきた
新しい希望と不安(2005〜2010年頃)
2005年前後にようやく景気が少し持ち直したが、リーマンショック(2008)でまた不況に
同時期にSNS(mixiやTwitter)が登場して、人のつながり方が変化
アニメ・サブカルチャーが世界的に注目され始め、日本の「クールジャパン」ブームも
2010年にはスマートフォンが登場して、社会がさらにデジタル化していくきっかけに
こんな感じでアナログ→デジタルの流れが始まった頃に「紙の辞書」を作る話
序盤に「PHSじゃないっすか!俺これもこれ欲しいんすよね〜」なんて西岡が言ってましたね
馬締
馬締に対する第一印象は「冗談通じないにも程があるだろ」でした
言葉を“正確に伝えたい” “大切にしたい”であろう馬締。辞書編集という地味な作業に何年も取り組む姿は、派手さはないけれど本当に格好いい
“好きなことに真面目でいる”って、こういうことなんだなと
用例採集までした林香具矢さんとの恋が実ったシーン。馬締が書いた “こい【恋】”の語釈。気がついたら口角が上がる
観ていて思ったのは、馬締のように“誠実な人”が報われる物語が、もっとあっていいということ。この映画では、彼の不器用さ、まっすぐさが欠点ではなく、寧ろ力になっていく
そこが良かった
くだけた言葉は一切使わず、常にですます調で話していた馬締が、松本先生を亡くして静かに泣きながら「間に合わなかったよ」と、普段とは違った口調で呟く場面
腹の底から出た言葉だと分かる。本当に悔しかったんでしょうね。日本語の奥深さが感じられました。あと俳優ってすげぇ
西岡
西岡に対する第一印象は「友達に欲しぃ〜」でした
松本先生が「見出し語を外部発注と編集部で書く言葉に分けて〜」と、大渡海についての会議?をしてるシーン。パートの佐々木さんから外部への原稿依頼を頼まれた西岡の返答。辞書を作る映画ですから、日本語字幕ありで見てたんですよ
字幕が「俺に任せてくださぁい」
「任せてください」ではなくて「くださぁい」
めっちゃ細かいですが、西岡の人間味が感じられる字幕がとても良かったですね
馬締の恋文に対して「なんで筆選んじゃったの!?戦国武将じゃねんだぞお前ぇ」と突っ込みつつ、インパクトあるしそのまま渡しても良いと言う西岡
チャラくて社交的で軽やか、まるで馬締の正反対。最初は“辞書づくりなんて地味で退屈”と思っていた彼が、少しずつその奥深さに惹かれていく。二人の対比がこの映画を面白くしている
にしても、“酔ってプロポーズとかマジ ダサいよね”
著者 三浦しをん
軽くですが、著者に関して
舟を編むは2011年に出版されたんですね。早稲田大学卒だそうで、当初は編集者として出版社に就職を志望していたみたいです。出版社、編集プロダクションの面接を20社以上受けるものの、就職氷河期で全滅。書店でアルバイトしていた期間があるとのことで、舟を編むの時代設定もこの時期ですよね
そしてお父さんが上代文学・伝承文学研究者の三浦佑之。千葉大学の名誉教授だそうですよ
さいごに
静かで、熱い、芯のある映画でした
馬締も語ってましたが、言葉は人を繋ぎますね
舟を編むの感想は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました
どんどんブログを更新していくので、ぜひ今後ともご贔屓に